遺書
遺書
桜
雪が降る夜でした
あなたが
みずから
命を絶ったのは
四谷で
さみしい
通夜が
しめやかに営まれ
モデルや
AV女優や
ソープ嬢が訪れ
あなたとの
別れを惜しみました
屋上から飛び降りた
あなたの後頭部は
へこんではいるが
顔は無傷でした
「綺麗な顔で
良かったね」
モデルも
AV女優も
ソープ嬢も
みんな 泣きました
故郷から
あなたの親類が来ましたが
すぐに帰って行きました
ご両親は来ませんでした
あなたの部屋に
遺書がありました
黒い
大きな男にあてた
遺書でした
男のところへ
持って行くと
「セックスしたのは覚えているが
顔は覚えていない」
黒い
大きな男は
言いました
正式な
夫婦となった
愛しあう
肉体的な交わりは
神が意図された
神の設計図
自分の夫
妻以外の者との
交わりは
不純な
みだらな性関係
けれど
彼女が
この世に
ひとつだけ
死と引きかえに
残した
ひとつの遺書は
夫でも
恋人でもなく
肉欲に焦がされた
不純な
みだらな
金による愛に
あてたもの
太陽には
3人の神さまがいる
光り輝く神
暖かな神
そして、もう一人は
影を作る神さま
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