【3歳女児餓死事件】児童虐待の連鎖断ち切れず、壮絶な虐待
「あんたなんか産まなきゃよかった」
みずからが壮絶な虐待、3歳女児放置死
誕生日ケーキを前に、ピース姿で写る、梯稀華(かけはし・のあ)ちゃん、3歳。
お母さんと一緒に楽しそうに笑っている稀華ちゃん、
3歳の長女、稀華(のあ)ちゃんに十分な食事を与えず、自宅に置き去りにして餓死させたとして、保護責任者遺棄致死の疑いで東京都大田区在住の元居酒屋店店員・梯沙希(かけはし・さき・24)容疑者が逮捕されたのは、2020年7月7日だった。
稀華ちゃんは8日間放置
梯容疑者は6月、稀華ちゃんを東京・大田区の自宅に放置し、知人の男性に会うため、8日間、鹿児島へ出かけていた。
沙希容疑者が旅行から帰宅した後、稀華ちゃんの異変に気が付き、119番通報。救急隊が駆けつけた際、稀華ちゃんは奥の部屋に敷かれたマットレスに横たわっていた。
梯容疑者は、稀華ちゃんに十分な食事を与えず、餓死させた。事件前にも、稀華ちゃんを自宅に放置し、度々出かけていた。
発見されたとき、稀華ちゃんの体重は、同じ年頃の子供より3キロほど少なかった。
2020年の正月に撮られた写真。母親と幸せそうな笑顔を浮かべている稀華ちゃん。誕生日や七五三のお祝いをするなど、娘を大切にしていた様子がみられる。
“彼氏”に会うため、3歳の娘を放置
幼い娘を餓死させた母親
2022年1月27日。
上下黒色のスーツ姿の梯沙希被告(26)が初公判に入廷した。
髪の毛の毛先だけが茶色く残り、逮捕から長い月日が過ぎていた。
3歳女児放置死
梯沙希被告は、2020年6月5日から13日にかけて、東京・大田区の自宅アパートに長女・稀華(のあ)ちゃん(当時3)を9日間放置。
脱水症と飢餓で死亡させた。
保護責任者遺棄致死の罪などに問われている。
電気が消され、扉には鍵
梯被告はシングルマザーとして稀華ちゃんを育てていた。
だが、交際相手の男性が住む鹿児島県を9日間旅行。
3歳の稀華ちゃんを自宅に1人で放置。
稀華ちゃんがいた寝室は電気が消された状態で、扉には鍵がかけられていた。
外側にはソファーが置かれていた。
胃はからっぽ
おむつを2枚重ねた稀華ちゃん。
胃や小腸には飲食物の形跡がなかった。
口の粘膜は水分が足りない状態で、ひび割れていた。
寝室には600mlの水とスナック菓子の袋が1袋。
どちらも空っぽだった。
裁判長:「起訴内容に間違いはありますか?」
梯被告:「大丈夫です」
梯被告は、起訴内容を認めた。
「あんたなんか産まなきゃよかった」
母親は、みずからも虐待の被害者だった
法廷では、梯被告が壮絶な虐待を受けていた過去が明らかになった。
梯被告は幼いころ、母親から日常的に殴るなどの暴行を受けていた。
手や膝をガムテープで縛られ、そのままビニール袋に入れられ、風呂場に捨てられていたこともあった。
包丁でおでこを切りつけられ、口を縫われることもあった。
「あんたなんか産まなきゃ良かった」
「お前は何も言わずに笑っていればいい」
母親からの暴言は、日常的だった。
止まない暴力や暴言。
誰も助けに来てくれる人はいない。
梯被告は、次第に無気力になった。
梯被告は、母親の顔色を常にうかがい、自分の身を守るために、笑っていた。
梯被告は、“他人に逆らうことが出来ない人格”が形成されていったと弁護側は主張した。
「虐待を受けていない人と比べてどれだけ非難できるのか、どれだけ刑務所に入れておかなければならないのかを考えてください」と、情状酌量を求めた。
検察側は冒頭陳述で、「稀華ちゃんを旅行に連れて行ったり、知人に頼んだりもせず、交際相手に会いに行った身勝手さ」「自宅に放置したまま遊びに出かけることを繰り返していた常習性」などを指摘した。
交際相手に会いに行ったのは、
「心に空いた穴を埋めるため」
稀華ちゃんを長い間放置し、鹿児島県の交際相手の男性になぜ会いに行ったのか。
梯被告が鹿児島県を訪れたのは、知人男性から誘いがあったため。
誘いを断れなかった。
その背景には、幼少期に虐待を受けたことなどが影響している、と梯被告は話した。この知人男性には5月と、事件が起きた6月の2回誘われていた。
交際相手の男性のことは、心から好きではなかった。
だが、“心に空いた穴を埋めるため”に、会いに行ったと梯被告は弁明した。
「行きたいと思って行ってないし、のんちゃん(=稀華ちゃん)を置いて行っているというのが大きくて。途中でお金貸しているし、何してんだろう自分って思いました。飛行機も乗らずに断っていれば、のんちゃんといられたのになと思って。全然楽しめなくて、言えないまま過ごしていました」
交際相手の男性に会うために旅行に出かける際、稀華ちゃんが寝ていた寝室の電気を消し、部屋の扉の鍵を閉め、外側にソファーを置いて出られないようにしていた。
この理由については、逮捕時の警察の調べと同様に、「台所の包丁を取りに行ったら危ないと思った」「キッチンが危なかったので行かせないようにするためだった」と話した。
このソファーのせいで、稀華ちゃんは、外に助けを求めに行くことができず、何も食べず、何も飲まず、苦しみながら亡くなった。
裁判では、稀華ちゃんが寝ていた寝室に、お菓子やパン、ペットボトルの飲み物少なくとも7本以上などを置いて行ったと何度も話した。
だが、事件当時、現場から発見されたのは、600mlの水が入ったペットボトルわずか1本とスナック菓子1袋のみだった。
梯被告は、被告人質問の最中、声を震わせ、「戻れるなら戻りたい、やり直せるならやり直したい」と泣きながら話した。
3歳でこの世を去った稀華ちゃんは、もう生き返らない。
検察側は懲役11年を求刑
「身勝手な犯行」
検察側は論告で、「稀華ちゃんが最後までもがき苦しんでなくなったのは一目瞭然」であるとして「交際相手に会いたいという自己の欲求を優先させた身勝手な犯行」と指摘。
起訴内容以外にも19回にもわたって稀華ちゃんを放置したまま外出したことも明らかにし、「育児放棄を常習的に繰り返す中で起こった犯行であることは明らか」として、懲役11年を求刑した。
梯被告は、最終意見陳述で、証言台に立ち、「ずっと変わらずのんちゃんごめんねって思いでいっぱいだし、全部後悔しかないです」と涙を流した。
判決は2月9日に言い渡される。
梯沙希被告(26)に懲役8年の実刑判決
3歳の長女を自宅に放置して9日間の旅行にでかけ衰弱死させた罪に問われている梯沙希被告(26)に対し、東京地裁は2020年2月9日、懲役8年の実刑判決を言い渡した。
検察側は、「酌むべき事情だが刑事責任を低下させるものではない」として懲役11年を求刑。
弁護側は「虐待などで形成された心理状態が影響していて、それほど強く非難できない」と主張していた。
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